桃と茶碗


 〜じじい と 桃〜


 むか〜し むか〜し

ある星の ある日本の ある県の ある村の あるところに

平凡な おじいさん と おばあさんが住んでいました。

 よく晴れた そんなある日のこと

おじいさんは川で魚釣りをしていたそうな・・・・・・。


ジジ「今日は魚が居らんのう〜」


あくびをしながら おじいさんは何となしに川上の方に目をやりました。

  するとどうでしょう。

  どんぶらこ〜 だんぶらこ〜 と 川に揺られ 岩にぶち当たり・・・・・・

  流れてくるではありませんか・・・・・・。

おじいさんは ぶったまげ 竿を手からポロリと落とし声をあげました。


ジジ「はうあっ!! 何とまーでけぇ桃だ! 持って帰って、ばあさんへの冥土の土産にしよう」


おじいさんは るんるん気分で川に足をつけ 大きな大きな桃を

死に物狂いで引き上げると 思わず目の前が三途の川に見えたそうな・・・・・・。

そうして えんやこら えんやこらと 重い桃を 途中 「地球の皆、おらに元気を分けてくれ!」などと

訳の分からないことを言いながら運んだそうな。


家に帰ったおじいさんは、早速ばあさんに見せたとさ。


ババ「あらららら! まあまあ! 何と大きな桃だ事、ありゃ?・・・・・・

   おじいさん、この桃まだ青いですよ」


ジジ「何!! 噺がうま過ぎると思ったわい!! ワシャのんだくれて、ふて寝するぞ ばあさんや!!」


おじいさんはスッカリ拗ね切ってしまい 子供の様に怒り狂って おばあさんに怒鳴りました。


ババ「えぇ、えぇ、良いですともおじいさん。 私はちょっと川へ洗濯に・・・・・・」


 おばあさんは穏やかに笑いながら おじいさんの背中に向かい、ゆっくり話しました。

おばあさんは こりゃ又ゆっくりした足取りで川辺に足を運びました。



 〜ばばあ と 茶碗〜


こうして川に来たおばあさんが洗濯物をしながら 「早く人間になりたい」などと

訳の分からぬ事を言っていると 川上の方から ずんずんずん どんどんどん と

茶碗が流れてきます。

ババ「おんや? 変わった茶碗だ事。 こっちに向かってくるよ・・・・・・」


おばあさんは 茶碗が手元に流れてくるのを待ち その茶碗を手に取りました。

  するとどうでしょう?。


ババ「おやおや、まあまあ、何と言う可愛い子じゃ」


そこには とてもとても小さな男の子が乗っていたのです。


一寸法師「むむっ、何奴! お噺ではきれいな姫とムフフな筈だったが!!」


ババ「ん? 何か申したか?」


一寸法師「いえいえ、おばあさん。 私は一寸法師と申す」


ババ「一寸ボウズ?」


一寸法師「いや一寸法師でござる」


ババ「ほう、一寸子牛とな?」


一寸法師「一寸法師だってんだろ、このクソババア!」


ババ「ん? 何か申したか? 一寸子牛」


一寸法師「・・・・・・」


ヤロー……っと思った一寸法師であった。


ババ「所で一寸子牛や? 一体何処に行く所なんじゃ?」


一寸法師「何処も宛てはありません。 宛てもなく旅をしていた所です」


ババ「ほんに、小さいのに大変じゃの? どうじゃろ、家に泊っては?」


一寸法師「よ! よいのであろうか、おばあさん!!」


ババ「良いんじゃ良いんじゃ、どうせババアとジジイの二人暮らしじゃ」


おばあさんは目に影を作り言いました。


一寸法師「そ、それではお言葉に甘えて」


一寸法師は急ぎの旅ではないので おばあさんの家に泊る事にしましたとさ。



   〜桃 と チェンソー〜


   こうして おじいさんと おばあさんの家にやって来た一寸法師は

子供に恵まれなかった二人にあたたかく出迎えられ とても美味しいごちそうに

おやつの きびだんごまで食べ お腹も心も満腹になりました。


 おじいさんと仲良く遊んだり おばあさんの愚痴を聞いたりと

 楽しく時を過ごしたそうな。

そしてお日様は沈み やがて静かに月が登り始めたのです。


早めの晩御飯を済まし 三人はデザートに 桃を食べることにしました。


ババ「うんしょ、うんしょ・・・・・・」


ジジ「えいさ、ほいさ・・・・・・」


おじいさん と おばあさんは 一寸法師のためにと

大きな大きな桃を 一生懸命運んできました。


一寸法師「!! うわぁ、何と、大きな桃ですね」


一寸法師は腰を抜かして驚きました。


ジジ「そうじゃろ、そうじゃろ。 ワシが見つけて運んで来たんじゃ。

   お前さんは小さいから、余計大きく見えるんじゃよ」

おじいさんは とてもとても 自慢気に桃に もたれかかって話しました。


ババ「さあさ、おじいさん。切り分けましょう」


おばあさんはニコニコと おじいさんに声をかけました。


ジジ「よしよし、そうじゃの」


おじいさんは うんうん と うなずき答えました。


スッカリ 桃の大きさに 度肝を抜かれた一寸法師の耳に 突如

この世のものとは思えない 音が入りました。


−−ブルルン……ブルルン……チュイィーーーーン……−−


ジジ「さて、殺(や)るかの?」


一寸法師「!!!(チェンソー!!)」


その けたたましい音の物騒なものを おじいさんは


ほとばしる笑顔で振りかざし 桃を真っ二つに切り始めました。


ジジ「イ〜ヤッホ〜」


そんな おじいさんの後ろで とても楽しそうに音頭をとる おばあさんの姿がありました。

いよいよ 桃が パカッと割れると おじいさんは切り分けようと

包丁を片手に 桃に近づきました。


ジジ「はうお゛!」


桃の中から 元気な男の子が姿を現しました。


桃太郎「!!(包丁)」


ジジ「お、おい! ばあさんや。 天変地異じゃ!!」


おじいさんは血相を変え おばあさんを呼びました。


ババ「まあまあ。 何ですか、おじい……あらあら! なんとまー可愛らしい子だ事。 きっと神様の思し召しでしょう」


おじいさんと おばあさんは顔をしわくちゃにし 桃から生まれでた赤子を覗き込みました。


一寸法師「な!! 何と、桃から赤子が生まれようとは」


一寸法師が驚いていると……。


桃太郎「おい。ジジイ。イキナリ真上からチェンソーで切るなよ。

    俺がよけなかったら、今頃、真っ二つだぜ?」


ジジ「あっ!…… そ、そりゃ、すまんかったのぅ……」


一寸法師「何だか…… 可愛げのない赤ん坊ですね」


おじいさん おばあさん 一寸法師は 三人とも目を丸くし 赤子を見つめました。


桃太郎「おい。名前付けろよ。いつまでも、赤ん坊、赤ん坊って呼ばれるのムカつくしなぁ」


ババ
ジジ   {名前}
一寸法師


三人は又 目を丸くし 赤ん坊に背を向け 何やらヒソヒソと話し始めました。


ジジ「よし! 良いじゃろう」


桃太郎「おう。チェンソージジイ」


ジジ「先ずは、浦島太郎。!ヘぶばっ!!」


桃太郎「何が先ずはダアッ!!」

−ドゲシッ−


赤ん坊の飛び蹴りが 華麗に おじいさんの顔面に炸裂しました。


一寸法師「ヒィ! おじいさん」


一寸法師は慌てて おじいさんに近寄りました。


ババ「葉加瀬太郎! !?キャバジョウー!!」


  −ゲシッゲシ−

赤ん坊は おばあさんや おじいさんの 謎の叫び声には突っ込みも入れず

容赦なく足蹴にします。


桃太郎「っざけんじゃねー!。あんな頭出来るかワレ―」


おばあさんの横顔にも 赤ん坊の全力の平手が華麗に炸裂しました。


一寸法師「ヒヤ〜、おばあさん!」


一寸法師は又また慌てて おばあさんに走り寄りました。


ジジ「では、ちから太郎じゃあ!!!」


桃太郎「うおらぁ!」


ジジ「オブジェ〜!!」


赤ん坊は 突っ込みの手加減もなく 全力でおじいさんと おばあさんを突っ込み続けました。

そのたびに訳の分からない おじいさんと おばあさんの悲鳴と叫びが

悲しみのレクイエムとし 上がります。


ババ「金太郎」


桃太郎「ノー!!」


ババ「!! ベブシ……」


家の中は 青ざめる一寸法師と おじいさん おばあさんの断末魔の叫びが響き渡っていたそうな。


一寸法師「ヒィ〜〜ッ」


一寸法師は怯えた顔をひきつらせ 勇気を出し 自分も参加する事を決意しましたとさ。


一寸法師「じ、じゃあ、北風小僧の勘太郎!!」


桃太郎「このチビめ」


  −ドパチュンッ−

一寸法師「グブべ……」


一寸法師は 赤ん坊の派手なデコピン一発で 壁まで飛ばされました。



ババ「おやまぁ、一寸子牛や!!」


おばあさんは慌てて一寸法師の救助に向かいました。


一寸法師「一寸……法師。でござる」


一言言うと一寸法師は気絶してしまいました。


ジジ「三年寝太郎じゃ! ドブー!」


相変わらず背後では おじいさんの断末魔の叫びが 響いています。


ジジ「しからば鬼太郎じゃあ!! コッペパーン!!」


桃太郎「オラオラオラオラ。さっきから太郎ばっか並べてねーか? 素直に名前付けろよ」


ババ「おじいさん、これではラチがあきませんね」


ジジ「ん〜む。仕方あるまい」


ババ「大きくなったら鬼ヶ島に行って、宝物をとって来て貰うんじゃし」


ジジ「あぁ。そうじゃの。では、桃太郎じゃ」


こうして 名前を巡っての大戦争の後 桃太郎と名付けられた男の子は

スクスクと ネクラ&オッタキーに育ちましたとさ……。



     〜軽トラ と 桃と〜


赤ん坊の頃はヤンチャのドが過ぎ あんなに暴れん坊だった桃太郎が

今では ネクラ&オタクに育ち 肥満体質になっていた。

と その頃 物語は待ってくれる事なく進行し 遂に鬼が村にやって来ては 悪さを仕出かすようになったとさ。

鶏を逃がしたり 漬物をあさったり 草履を隠したりと まあ大変な悪事を重ねたとか……。


そんな中 小さな小さな一寸法師が かねてから探し求めていた

打ち出の小槌を 鬼が腰にしているのを見つけました。


ジジ「そろそろ鬼をこらしめてくれんかの?」


一寸法師「鬼が持ってる、打ち出の小槌を一緒に、取り戻しに行って欲しいんだ」


どんなに三人が口々にお願いをしても 桃太郎の返事は決まって……。


桃太郎「視なきゃいけないアニメ溜まってるんだよ!」


と 切れ口調で一言 突っぱね返すのであった。


数か月後

おじいさん おばあさんは 戦法を変え桃太郎にせまりました。


ババ「桃太郎や、今度鬼ヶ島でコスプレ大会が開かれるそうじゃよ」


ジジ「楽しそうなイベントじゃないか。行っといで、桃太郎や」


ババ「えぇえぇ、ラムちゃんの格好をした人が一杯集まるそうじゃ」


一寸法師「……」

桃太郎「……」


おじいさん おばあさんは ニコニコしながら 我ながらしてやったり と

言わんばかりに 桃太郎を見つめました。


“今時ラムちゃんなんて”と 突っ込むのも面倒で 家にいても

ジジイやババアが五月蠅いので しぶしぶ 桃太郎は鬼ヶ島に出かける事にしました。


ババ「桃太郎や、きび団子をお持ち」


桃太郎「飽きたから要らない」


ジジ「じゃあ、このもぎたての桃でも持っていきなさい」


そうして桃太郎は軽トラの後ろに 大量の桃を積み込み 一寸法師と共に トラックに乗り込みました。


ジジ「それじゃ二人とも、くれぐれも気をつけるんじゃぞ」


ババ「一寸子牛や、しっかりね」


一寸法師「はい、必ず帰って参ります」


こうして 桃太郎を乗せた軽トラは “与作”の歌を流しながら遠ざかって行きました。

おじいさんと おばあさんは やれやれと手を振り それを見送ります。


のんびり のんびり 旅路を行くと……。


犬「うき―、うっきっきー! あ……間違えた。 ワンワン!! ワンワン!!」


一寸法師「あ!! 犬だよ桃太郎」


桃太郎「え?」


  −ドン−


犬「ぐべぇ゛」


何と言うことでしょう。


犬は匠(桃太郎)の手により ミンチになりかけたのです。


犬「テメ―! 何涼しい顔して人、じゃない。犬を跳ね飛ばしてんだよ。


   昔話じゃなかったら 俺は今頃ミンチだぜ?」


桃太郎「いきなり飛び出してくるからじゃないか」


もはや 桃太郎は 正義のヒーローと呼べる 代物では無くなっていた。


一寸法師「桃太郎、ここは謝った方が良いよ」


桃太郎「だってこれじゃ当たり屋じゃないか」


犬「何言い掛かりつけてんだよ。大体このお話は昔話の桃太郎だろ!

  何“与作”かけながら軽トラで、すたんばってた犬跳ね飛ばしてくれてんだよ」


一寸法師「ごもっともで……」


桃太郎「ちょっと、勝手に桃太郎にしないでくれるかな?

   これは“桃と茶碗”なんだよ。 作者の意図なんだよね」


一寸法師「うわ……みもふたもない」


犬「屁理屈かよ。 ふざけんなよ、こちとら被害犬だぞ」


桃太郎「うるさいなー、わかったよ。 お詫びにもぎたての桃をご馳走するからさ」


犬「おっ。 やっとその気になったか。 桃大好きなんだよ、仕方ねー。

   許してやるか。 しかし、きび団子じゃねーのか?」


桃太郎「飽きたんだよね、田舎くさいし」


犬「……へー」


そう言うと 犬は ムシャムシャと美味そうに桃にかぶりつきました。

たらふく食べ終え 桃太郎に尋ねました。


犬「桃太郎さんよ、何処は行くんだよ」


桃太郎「鬼ヶ島にね。イベントがあるって聞いてさ」


犬「イベント!?」


一寸法師「ラムちゃんのコスプレ大会だとか何とか……」


犬「何! ラムちゃんだと? 行く! 連れてってくれ、桃太郎さんよ」


桃太郎「ん〜、別にいいよ」


こうして 犬を仲間に まだまだ行きます。












只今、執筆中。
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